雀聖と呼ばれた男

名前だけは別の人物を拝借して、実際にあった俺の麻雀話。

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 場は沈黙に支配されていた。
 呼吸すら憚れる混沌とした空気だ。
 …煙草の煙が臭いから。
 俺は現在、10000点ぐらいで断トツのビリだ。トップは親のRansrotである。既に45000点ほど稼いでいた。二位が夙の27000点。三位に18000点ぐらいのさらすぴGだ。
 俺は諦めていなかった。このオーラス、逆転に一縷の望みを託せる手が来ようとしていたからだ。
 そして六順目ついに俺はテンパイした。高目が出れば一位になる可能性もある。
「リーチ!」
 俺は速攻で立直をかけた。しかしその二順後。
「悪いな。追っ掛けリーチだ!」
 さらすぴGが追っ掛けリーチをかけてきた。捨て牌は参萬。マンズはほとんど場に出されておらず、さらすぴGはマンズで待っているだろう。そう俺は直感した。
 そして四順後、俺は壱萬をツモってきた。
 パシーン!
 一際高く卓に牌を打ち付ける。
「ロン!」
 その瞬間、さらすぴGが手を倒した。
 壱と四萬待ちだったらしい。
「これで逆転だな!」
「フッ…アンタ、背中が煤けてるぜ」
 俺はニヤリと笑った。
「何ィ!?」
「俺はまだ河に捨てちゃいないぜ」
「!? …しまった!!」
 俺は静かに手牌を倒した。
「ツモ」
 
     壱壱壱弐六七七七七八白白白西西西
 
 リーチ、ツモ、ホンイツ、サンアンコー、白、ドラ三の三倍萬である。
「11本折れた。…三倍萬で俺の逆転勝ちだな」
「馬鹿な!俺がリーチをかけたときの参萬で上がれたじゃないか!なぜ見逃す!?」
「もし参萬でロンしたら、リーチ、ホンイツ、白、ドラ三で倍萬止まりだ。倍萬は16000点。俺の点10000+16000=26000点。これじゃあ三位までだ」
 続けてRansrotが言う。
「三倍萬は24000点。ツモだから親から12000点、子から6000点ずつ徴収できる。Millreefの得点は10000+24000=34000 トップの俺は45000-12000=33000というわけさ」
「つまり、Millreefの逆転勝ち…と言うわけだ」
 夙がそう言って得点票をつける。
「まさか目先の上がりを見捨ててまで、ツモに賭けるとは!恐るべし…」
 ここに奇跡の大逆転はなったのだ。雀聖の降臨した瞬間だった。
 まあこの日は結局、トータルで四位だったんだけどな!ハッハッハ!
 ち、ちくしょー!